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ヘキサブログ
いいモノづくり道
ZONE OF THE ENDERS HD EDITION -はいだらクオリティへの道- For quality and performance improvement.
今日は PlayStation3『ZONE OF THE ENDERS HD EDITION』の不具合修正パッチ & Best版のリリース日です!
今日配信された修正パッチとベスト版に関しまして弊社が担当致しました。
この度の担当は ANUBIS ZONE OF THE ENDERS(ZOE2) のPS3版のみとなります。
「 PS3『ZONE OF THE ENDERS HD EDITION』の不具合修正パッチ & Best版」
に携わらせて頂きました、メインプログラマー兼ANUBIS大ファンのホリバーです。
宜しくお願いします。
去年の大神絶景版の記事に続き、制作舞台裏のお話です。
今回のPS3版のお仕事の依頼を受けまして、どこまでクオリティアップできるかの挑戦のお話です。
当作品についてのクオリティ改善のお話をしてみたいと思います。
弊社で過去に担当してきた作品を考えた場合に今回は特殊な状況下に有りました。
作品そのものは既に発売されている。
そのため最初から作るよりも設計の自由度に制限がある。
元の制作会社は海外の会社
ネイティブな資料はないためソースコードから全て解析を行い、その上で対策を講じる必要がある。
そしてPlayStation3の性能を最大限に引き出すには「前提条件」があります。
Cell Broadband EngineのプロセッサSPUを効率的に稼働させる必要がある。
GPU RSXの性能を引き出すために最適化した描画エンジン設計。
そしてなんといってもPS2版原作のZOE2 ANUBISが当時のPlayStation2の性能を最大限に引き出した設計になっていたことです。
当時一人のプレイヤーとしてプレイしていた頃、その表現には純粋に感動したものですが、
今回携わってPS2オリジナルスタッフの力量には我々も驚くばかりでした。
「これは一筋縄ではいかない。」
PS2は当時驚くべき性能でしたが、今改めて見ても当時の標準的な性能を大きく逸脱したスペックだと思います。
まさにゲームの歴史におけるオーパーツ…
世代が変わってPS3で性能が向上しているとはいえ、PS2の最大性能に立ち向かうのは容易なことではありません。
当時はSD解像度でしたが、720p/1080pでHD画質になったことで描画しなければならない面積が格段に広くなっていますので
対等になるにはPS3でも最大性能でぶつからなければなりません。
社内チームで最初に決断したこと。それは…
”修正パッチ作成”というお題にしてはかなりリスクが高い決断です。
少し直すのではなくまるごと作り変えるというのですから…
しかし、目標に到達するためにはこのままではたどり着けないことがわかっていました。
PS3の性能を引き出すために専用に最適化された社内の描画エンジンに入れ替えるという大手術となりました。
今日この日を迎えられたということはこれが実現できたということになります。
皆さんからすると「結局パッチで何が変わったの?」ということが一番知りたい部分だと思いますので、この後に紹介していこうと思います。
■フレームレート改善・高速化
「速くなったのか、どうなのか!? PS2原作の楽しさが損なわれたりしていないのか?」
やはり今回の修正パッチの最大の焦点はここにあります。
特にPS2原作からファンだった人は当時の感動を再び体験したいという思いで手にされている人も多いと思います。
CPU
PS2には専用のベクトル演算ユニットが搭載されていました。
この演算性能がPS2ではオリジナル版スタッフによって限界まで最適化されていました。
PS3ではSPU全基フル稼働させてそれを補う作りに最適化しなおしました。
GPU
着手当初に現状の処理時間を計測と分析をしたところ、GPUの負荷が非常に高く余裕の無い状態にあることが判りました。
少々修正しただけでは、この状況を改善することなど到底敵わないことが明らかでした。
その為に「描画エンジン総入れ替え」という苦渋の決断を取ることになりました。
これによって元から比較すると10倍速以上の高速化が実現されています。PS2と同じ60fps動作が実現されました。
10年以上前のゲーム機とはいえ、当時の技術の結晶というべきPS2の性能は侮れません。
実は今回はマスターアップギリギリまでこの部分だけは何とか死守したい、ということで原作スタッフ監修のもとチューニングを進めていました。
PS2原作よりも快適になっているシーンも多くあります。
例えばゲーム開始直後の敵の群衆(モスキート群とラプター複数体)が沢山出る場面などフル60fpsにまで改善されています。
・・・と、ここで本来は修正パッチの目的は達成したことになるわけですが、
「HD EDITION」という名前の通りPS2原作よりも高精細になった感動を少しでも体験してほしいという思いから高速化と同時に弊社で独自に品質の向上を図っています。
このビジュアル面での変更で見た目が変化することになりますが
演出や表現がZOE2に相応しいかどうか全てのシーンをPS2原作スタッフ監修のもと検証していただくことが出来ました。
安心して力強く前進できた部分になります。
※以下のスクリーンショットは「株式会社 コナミデジタルエンタテインメント」様の許諾のもと掲載しています。※
■1080p FullHD (1920×1080) 対応
PS3で最大の鮮明さの表現ができるのは1920×1080という解像度です。
特にタイトル画面やメニューの文字、字幕などがFullHDでクッキリ鮮明になったことでより一層HD化の喜びを感じでいただけると思います。
出力だけが1080pではなく、レンダリングをFullHD解像度で行うように改良しているためくっきり鮮明になりました。
VRトレーニング中やサブウェポン取得時の小さい文字も鮮明に描き出します。
■グレア表現の高画質化
この作品の印象を決定付ける重要な要素の一つです。
PS2原作の表現をそのままに、HD解像度専用にフルスクラッチでプログラムを書き起こし直しています。
描画性能が向上し、画質向上で光の表現がより一層美しくなっています。
■アンチエイリアシングの対応
つまりエッジのギザギザ感の低減です。
オービタルフレームやLEVのシャープなシルエットを美しく見せるために導入しています。
当作品では人工的な構造物が多いため、より効果が際立ちます。
ギザギザ感が低減され、ツルッとした見た目になりました。
1080p動作時はテクスチャの解像感も倍化されていますので鮮明さが向上しています。
■グラデーションに現れる縞模様(マッハバンド)の改善
当作品では PS2のGraphicsSynthesizerのハードウェア固有の表現を行うためにGPU内部で特殊な対応がされています。
パッチ適用前は、その影響で色の階調が減少していましたので元の階調を維持したまま表現できるように内部演算精度を改善しています。
これによってテクスチャが綺麗になる効果があります。
■高品質な被写界深度(ピンぼけ)表現
綺麗なボケ味を出すためにグレアと同じく今回のパッチでPS3に最適な状態にフルスクラッチで書き起こし直しています。
手前ボケ・奥ボケをHD解像度に適応させるとともに次世代の表現手法も一部取り入れています。
■マップ表示のデザインの見直し
パッチ前と比較してもPS2原作と比較しても大きく変化している部分になります。
この部分だけは再度デザインレベルで見直しが入り、16:9対応を行いつつPS2原作のマップ描写ができるデザインに レイアウトが変更されました。こちらもPS2原作スタッフの監修のもと改良を施しています。
■32xアンチエイリアスライン対応
「ワイヤーフレーム・ライン表現」はこの作品に鮮烈な印象を与える一つの要素です。
隠れたZOEビジュアル表現の名脇役とも言えるライン表現を高画質化しました。
なめらかなワイヤーフレーム表現によってリングレーダーやロックオンカーソル、マップのワイヤーフレーム表示が美しくなっています。
■SD解像度(480p) 高画質化
面積が減って負荷が抑えられるぶん、16xAA相当のモデル表示と128xAA相当のなめらかな階調のライン描画を行なっています。
16:9のワイド表示の中にHD解像度の情報量を畳み込んでいます。「SD解像度でもPS2よりもチョット良い感じ」を体験していただけます。
■PS2のGraphicsSynthesizerの再現性を向上
昨今の一般的なGPUとは異なり、PS2には高速動作のための特殊な機能が多数存在しています。
これによって当時優れた性能を得ることに成功したPS2ですが、
その特殊仕様を自在に駆使して美しいビジュアル表現を行なっていたZOE2 ANUBISでは、これらを再現しなければ同じ見え方にならないことが多々あります。
これらの再現するためのPS2グラフィックのエミュレーション実装を追加しました。
向上している部分はこの比較した箇所以外にも沢山あります。セラーのビジュアルや各キャラクター、建造物・地形などの表現の原作からの再現性(表現や色調、フォグの正確さや印象)がPS2と同じになり向上しています。又、削減されていたエフェクトの量やボリュームも倍増しPS2原作と同じに改善されています。描画処理量はパッチ前と比較して大幅に増加しています。
今回のプロジェクトには弊社社内では私を含め、当時作品のファンだったメンバーでチーム編成がされています。
作っていくうちにZOE2本来の輝きを取り戻していく様子は燃えるシチュエーションの連続でした。
原作スタッフの本当に熱い思いが伝わってきて、最後まで楽しいお仕事でした。
短い期間でしたがいつの間にか、もっと触れていたい名残惜しいプロジェクトになりました。
この作品に携わることができて本当に光栄です。
本来であればスタッフロールに携わったスタッフの名前を出す予定でしたが、その時間をクオリティアップに回させて頂きました
(本当にタイムアップギリギリまでの時間の限界への挑戦でした)
その為、ページスペースを割いて申し訳ございませんがスタッフはこちらでご紹介させて頂きます。
【PROJECT MANAGEMENT】
松下 正和 (Masakazu Matsushita)
【SUPERVISOR】
中村 浩一郎(Kouichiro Nakamura)
【PROGRAMMING】
堀端 彰 (Akira Horibata)
岩崎 順一 (Junichi Iwasaki)
藤原 正和 (Masakazu Fujiwara)
関本 大嗣 (Daishi Sekimoto)
中山 徹 (Toru Nakayama)
【SPECIAL THANKS】
小原 操 (Misao Ohara)
◆ 合同会社シュガーカット SUGARCUT, LLC. ◆
【PROGRAMMING】
五十川 洋一 (Yoichi Isogawa)
福田 正教 (Masanori Fukuda)
ファンの一人として、今回のパッチは良い出来になっていると思います。
是非、遊んで頂ければ幸いです。
生まれ変わった『ZONE OF THE ENDERS HD EDITION』のHD(ヘキサドライブ)版を
今後とも、宜しくお願い致します!
はいだらーーーーーーーー!!!!
追記:
公式HPに、より分かりやすく解説されております。
こちらも、見て頂けると嬉しく思います。
公式HPこちらから
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