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HEXA BLOGゲーム2020.3.24

地味がなぜ面白いのか

目には青葉 山ほととぎす ミッツです🍷

自分はかねてより『ハースストーン』というカードゲームを長らく楽しんでいて、
時には、参考のために他の方が投稿しているプレイ動画も見たりします。
他ジャンルのカードゲームのプレイ動画の例にもれず、『ハースストーン』にも
様々なプレイスタイルの動画が投稿されています。
そんな中、自分が最近ちょっと注目している系統の動画があります‼

■【HearthStone】地味なカードを輝かせたい!
https://www.nicovideo.jp/watch/sm34614788

この動画の主旨は「使用率や勝率が低いという統計が出ているカードをあえてデッキに採用し、
それを何とかかんとか活躍させてみよう」というものでした。
このテーマをシリーズとして結構いくつもの動画が投稿されているのですが、
これらを視聴しているうちに、興味深い考察が色々と、自分の中から出てきたのです。
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📌地味とは何か?

この動画のタイトルが「地味なカードを輝かせたい」という名前にあるとおり、
動画テーマに起用されるカードは、いわば「地味」ということです。
ですが、ここでいう「地味」とは何なのか、投稿者のただの気まぐれというだけでなく、
そして単にカードが弱いというだけでもない(まぁ、弱いというのが少なからぬ比重を
占めていることは間違いないでしょうが…)気がしました。
そこには意外と複雑な要素があるのではないか、そう考えた私は、シリーズの動画を視聴
する中でパターンを模索し、結果、以下の傾向に分類してみました。

💡A:発揮条件が厳しい
これはいわゆる「弱い」に属するカードも備えているパターンです。
カードの効果自体に厳しい条件が設定されているケースが一番分かりやすく、
クソレジェ(レジェンドという最高レアリティにいることを恥じるべきだと
低評価されている弱カードのこと)の多くも該当しています。

💡B:別カードで代替できる
別カードに類似の効果があり、なおかつそちらのカードを使う方が合理的と
されるようなパターンです。
よく「このカードでなくても、○×を使えばいいよね」という口ぶりによって
このケースを確認することができます。

💡C:勝利に直結しにくい/影響が分からない
このカードの持っている効果が、勝利や戦局の変化に直結していないことで、
効果を発揮したのに「それで勝てたのか分からない」パターンです。
この『ハースストーン』というゲームの性質上、盤面の主導権を握ることや
手札充実に関係ある効果はその強さを分かりやすく発揮します。
一方で、自ヒーローの装甲付与などは勝利に直結しにくい傾向にありますし、
相手の手札やデッキを阻害するといった秘匿情報に影響させる間接的な効果も、
この、良く分からないというケースに該当します。

世の中の『ハースストーン』プレイ動画には、強さを競うストイックな動画もあれば、
弱カードに焦点を当てて変わった使い方を披露するエンターテイメント動画もあります。
しかし、そうした中でこの動画のいう「地味」という評価が持つ、複層的な意味合いは
私にとって、とても興味深いものだったのです。
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📌地味がなぜ面白いの

トレーディングカードゲームは、様々なカードの組み合わせ(シナジー)によって
戦略を生んでいくことを、UX上の根幹としています。
あらゆるカードはその可能性を備え、集め甲斐や選び甲斐を生むことが大切です。
転じれば、「地味」なカードはゲーム的に成功していないカードに分類されますし、
普通に使う分には、勝利からも面白さからも距離が遠のくカードのはずです。

にも関わらず、私はこの「地味なカード」を根幹に置いた動画に対して「面白い」
という感情を抱くに至ります。
なぜ「地味」なカードのプレイ動画が「面白い」のかを読み解くことができれば、
それはカードゲームのルール外にあるUX的な価値になるのではないでしょうか。
そこで私は、パンタローネ様にその存在を教えてもらった、笑いのメカニズムに
関する3つの理論で、この動画に自身が抱いた「面白さ」を分解してみました。

💡優越の理論
古くは哲学者プラトンも考察したアプローチらしく、対象の欠点を知ることにより
自身が優越感を覚えることで発生する笑いのようです。
本来、この種のカードゲームでは、勝者が抱くのがこの優越の笑いでしょう。
上記のパターンA~Cの中で「A:発揮条件が厳しい」などに分類する、いわゆる
弱いカード群に抱く笑いにも、優越の理論があるかもしれません。
また、拡大解釈すれば「あぁ、こういう使い方があったのか」などの好奇心と理解の
プロセスで抱く面白いという気持ちにも、「対象を理解し支配できた」という優越の
笑いが根底にあるのかもしれません。

💡不一致の理論
ドイツの哲学者ショーペンハウエルなどが考察したアプローチで、自身の常識的に
予測する状況と発生した状況との間に、不一致があると生まれる笑いらしいです。
例えば「なんでそうなるの!?」「そこでその恰好するのかよ!」みたいな?
今回の動画に関して振り返ると、「地味なカードを“あえて”使う」という主旨全体が、
本来のゲームメカニクスと不一致を生んでいると言えるでしょう。
この理論による笑いが、「地味」を楽しく感じるもっとも中心と思われました。

💡放出の理論
ドイツの哲学者カントやオーストリアの心理学者フロイトなどが考察したアプローチで、
緊張状態の維持が不要になって溜まっていたエネルギーを開放する時に笑いが生まれる
というもので、衝動的に噴き出す爆笑やストレス緩和された時の安堵などが代表的です。
今回の動画は、いわゆる「地味なカードの希少な活躍シーン」が生まれるまでは、その
経緯を見守り続けるだけ、ほとんどの時間は心的エネルギーはまだ高まりません。
カードや手札や状況が成立した時、一気に興奮とそれを抑えるストレスが高まります。
そして「希少な活躍シーン」はその興奮とストレスを高い状態で維持し、以下の2つの
ルートのどちらかで、笑いへ放出がおこなわれる傾向にありました。
 A:その地味な効果が「苦労に見合わない成果(不一致)」と認識した時
 B:苦労して配置したカードのモンスターが「あっさり除去(不一致)」された時
つまり、どちらも不一致による笑いが根底や前提にあり、放出の理論はそれを増幅したり
するための働き、といったところが自分なりの今回の放出系笑いへの解釈でした。

以上から、今回ご紹介した動画の持つ笑いについて、私は分解をおこないました。
このカード自体の弱さが生まれる「優越の笑い」は独立し、
このカードを使用するという不合理な状況によって生まれる「不一致の笑い」は
動画という時間経過の中で醸成される緊張によって「放出の笑い」として増幅される。
まぁ笑いについて一々理屈を唱えるでもないという向きもありますが、自分にとっては感情の
衝動が何に裏付けされているのか知るのも興味深い考察なのでした。

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📌総括

本来であれば、ゲームデザイン上で「失敗」とか「無駄」といった不合格の烙印が
押されるはずだったカードたちが、このような「地味なカード」という動画テーマの
場を得ることによって新たな価値を生み出している。
それは、人間の抱く「面白い」の多様性であり、同時にエンターテイメントが持つ
価値の(潜在的な)多面性でもあると思います。

自分はゲームデザイナーの仕事柄、そのゲームの面白いというUXの策定に携わり、
それはこうですと開発メンバーに伝えるのが役割なわけですが、
時にはこの動画シリーズのことを思い出しては「お前の定義している「面白い」だけに
固めてもいいのか? 逆の発想に面白いが転がっていることもないか?」という自問自答を、
あえて脳内によぎらせることもあったりします。

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