HEXA BLOG
ヘキサブログ
料理
造物主の掟(メンテナンスは重要)
おはようございます、ITインフラ担当のささきです。
先日燻したベーコン
というわけでヅカ・料理・ヅカと順を重ねてきましたこのblogですが順当に料理の順番です。
本稿は料理に興味のない方を100%置き去りにしているような投稿になりますが、包丁とはPCの隠喩であるという前提でお読みいただくと素晴らしい効果を発揮する場合があります。
なんとなくこの2018年の日本で生活していると「機械は壊れない」「機械はメンテナンスしなくても同じ性能で動き続ける」「機械はタダで動き続ける」と勘違いしてしまう。ほんの半世紀ほど昔には粗悪品の代名詞だった「日本製」が高機能高性能高耐久の製品の代名詞となるまで戦後30年もかからなかった。(cf:BTTF「何いってるんだい?いつだって日本製は最高さ!」)もっとも明治維新から戦艦大和まで70年ほどなので、まぁそんなもんなのだろうとも思えてくる。よくよく考えると終戦から2018年時点まで、すでに73年たっているので太平洋戦争を中間地点に明治維新を振り返ることができそうだが長くなる上にまとまらないであろうからやめておく。
あまりにも高性能になりすぎた日本の機械に対する信頼の弊害が一番端的に現れているのが自動車とどのご家庭にもある一番原始的な機械といえる包丁だろう。機械の定義が「人間に有用な目的を達成するために,物体を組合せてつくり,これらの各部に所定の機能を与え,全体の機能を実現させたもの」と昨今ではなってるのそうで(10年前に習ったときはもっとメカ限定のニュアンスがあった気がする、覚えてないけど)、非常に原始的な「切る」という目的のために作られた包丁を機械の一つとしても差し支えはないだろう。
その包丁だが機械に対する信頼の高い日本人は買ってきて、使って、なんか切れなくなったなぁ、この包丁も寿命かなぁ、と言ったり。1000円でスーパーで買った包丁だからすぐ切れなくなった、安物は良くないね。と言ってメンテナンスもせずホイホイ買い替えてしまう。もしくは、なんとなくこんなものかと考えもせずそのまま使い続けてしまう。
包丁はメンテナンスが必須の機械製品と筆者は考えている。日本車同様ほぼメンテフリーでいつまでも動き続ける製品ではない。大体皆車検も出さない車が壊れたとして、それを車のせいにするだろうか?同じことは包丁にも言える。売り文句に「切れ味長持ち!」という意味は「切れ味長持ち(しますけどそのうち切れなくなります)」ということなのだ。ちょっと気の利いたTV通販になると研ぎ器もセットでおつけします!などと言っているのがその証左。包丁はメンテナンス=研ぎをしなければならない製品なのだ。
包丁の良し悪しは何で決まるか?これは実は決まっていない。先に述べたとおり「ある目的を達するための機械」とすると「目的」に合致しているか?が一番重要な要素となる。無論その本質が「切る」という事であるから、どんな包丁を買ってもどれだけ切れなくなってもある程度は切れてしまう。日本車と同じで「どれを買ってもなんとなく使えてしまう」のだ。しかし目的に合致した包丁を使った場合、その性能が引き出され、目的に対する我々の当初の期待値を上回る結果を叩き出す事ができる。木ねじで鉄板を留めようとしたり、4tトラックでドライブに行ったり、PS1でBDを再生させようと試みる見当違いを起こす人はあまりいない。明らかに用途が違うということは大抵の場合理解されやすい。しかし事が包丁となると「何となく切れる」であまり気を使わずに家庭にある1本や2本の包丁だけで作業をしてしまう。
大体我が国日本の義務教育期間中に包丁の使い方研ぎ方使用用途の区別についてきちんと学ぶ機会があるだろうか?少なくとも筆者の年代では無かった。せいぜいが小学校の家庭科の調理実習で使い方を学ぶ程度であった。更に悪いことに「日本の優秀な」工業製品になってしまった家庭用包丁は日本車と同じようにメンテナンスせずともなんとなく目的を達せられる優秀な製品になってしまったのだ。これは古い方にはご記憶あるかと思うが、昔の住宅街やマンション団地には包丁研ぎの職人が行商に回っていた。これはその頃の家庭には包丁がそれなりの数あったということでもあるし、まめに研がなければ使い物にならない製品であったという事を示していると思われる。
さて、良し悪しはない、何を買ってもそれなりに目的は達せられる、という製品であれば何を基準に包丁を買えばいいのだろうか?筆者は割と買い物に節操がないタイプの人間だが、「自分の使う道具」であれば一つの基準がある。それは「実用品」であるということだ。包丁は切るための道具なのに何を言っているという向きもあろうが、包丁には実用的ではない見栄えを重視した製品が多数ある。またこの業界にもマニアとスペック重視の人種がおり、実際使うとそれはどうなんだ、という製品が多数ある。筆者にとって実用品とは性能がよくメンテナンスがしやすく長く使える製品(できれば価格は安く)だ。自分の中で自分が使う機材にはこの基準を満たすものを選ぶようにしている。そしてできれば工業製品というよりも、バックストーリーのあるブランドのできれば職人による品がほしいと考えてしまう。これは完全に我欲だが、社員よりも職人、工場長よりも親方の作った品が「カッコイイ」と思ってしまうのだ。
以上から筆者が買う包丁は自分でメンテナンスできるので錆びても良い、切れ味の持続も家庭用なのでそれなりで良い、プロユースの実用品、できれば職人の手による製品、となる。包丁マニアになると、やれ鋼材は日立金属の安来鋼で青だの白だの、でなければ武生特殊鋼材株式会社のV金10号だとか舶来品万歳でスウェーデン鋼でなければとか言い出す。柄の材質も合成木派、黒檀派、朴派、ステンレス派等々があり、収集がつかない。個人的に外観以外の性能が何一つないと考えているダマスカス模様は高級品として定着さえしている上に、模様の濃い薄い、渦の巻き方、層の重ね方でマニア同士日々ネットの片隅で殴り合っている。切れ味だけを追求するならば、医療用のメスが一番切れるのは間違いないのだが、どうもそういうマニアは聞いたことがないので生息していたとしてもごくごく少数なのだろう。
研ぎは最近自分でも勉強を始めたスキルだが想像以上に簡単で、かなり驚いた。今までプロやセミプロに定期的に出していたのが何だったのかと。結局良く考えてみると一昔前までどの家でも包丁は研いでいたし、それこそ昔話で山姥は夜毎に包丁を研ぐモノだったのだ。そんなすごい高等技術ではなく食わず嫌いなだけなのだ。
砥石の選定は一昔前とはまるで状況が違う。実際自分が包丁をパカパカ買ってた頃は「キングが基本」「天然が最強」というのが概ねどこのwebサイトにも書かれていた。しかし久しぶりに砥石界隈を覗いてみると猫も杓子もシャプトン社製の「刃の黒幕」シリーズ1択ということになっている。本当にどこもかしこも刃の黒幕。黒幕なのに隠れてない……隠れろよ黒幕、と思うがまぁいい。
実際使ってみると「砥石は最低20分水につけて気泡が出なくなるまで云々」といった面倒なお作法がない。表面さっと水かけてシャコシャコ研げる、その上研ぐ感触もいいし、研ぎ上がりもよい。なるほどこれは猫も杓子も「シャプトン」「シャプトン」と言う訳だ。研ぎの先生のところで1000番オレンジと8000番メロン、30000番ムラサキを試したが、研ぎ上がりに深夜の通販番組のようにトマトは切れるし極太のケーブルだって切れそうな切れ味になった。しかも作業時間15分。研ごうと思ったら研げるというのは実に気持ちがいいものだ。
というわけでダラダラと書き連ねてきた長文だが何が言いたいのかというと
「ところでこないだヤフオクで落とした包丁を見てくれ、こいつをどう思う?」
杉本刃物本霞製最上級品柳刃330mm(尺1)
ちょっと台所のサイズに合ってない気もするが(・ε・)キニシナイ!!
自分の研ぎの技量的に研げるのかと言われるとちょっと怖い。ただしこれで買ってきた刺身のサクを切ると「なるほど切れ味とは味の一つだな」と思えるくらい違う。試しに自分でキレキレに研いだ牛刀で同じサクを切ってみたが違うのだ。念のために妻にも試食してもらったが確実にこの柳刃で切ったほうが上、具体的には牛刀で切ると1人3000円くらいの居酒屋の刺身、柳刃だと7-8000円の和食の店の刺身になるとの事。設備投資をした甲斐があった瞬間であった。
お勧めの包丁は何ですか?と聞かれたら根掘り葉掘り使用環境と用途を確認しなければならないので一概にどれがいいとは言えない。しかしまぁ最大公約数的な製品はある。それが18-21センチあたりのサイズのステンレスの牛刀だ。間違ってもマニアか切れ味教信者でないなら鉄のものを選んではいけない。家庭で使うには些か面倒だ。筆者はもう15年以上鉄の包丁を使っているのでどうということはないが、妻には不評。おいそれと他人に勧められない十字架の道行である。三徳包丁でなく牛刀を選ぶ理由は使い勝手の良さと三徳にはない刃の曲線が生む切れ味、そしてビニール袋とか紐とか切っ先でパッと切れる便利さがおすすめできる要素。そしてできれば「ツバ付き」となっているものを選ぶと製品のグレードが一つ上なので精度と材のいいものが買える(傾向にある)。最近友人が結婚したのでお祝いに1本送ってあげようかなと自分でも考えている。そのため諸々要素を勘案しているが詰まるところはこんなものだろう。
18-21センチのステンレス製のツバ付き牛刀。
安くてハズレないのは下村工業のヴェルダンシリーズ、とにかく軽くて柄までステンなので雑に食洗機で洗っても良い。洗わないけど。amazonで3000円以下で買えるので、冥府魔道への第一歩として超いい、ちゃんと切れるし研げる、何より安いので盛大に失敗しても「まいっか」となる。次の価格帯だと5000円前後で買える貝印の関孫六シリーズ。それ以上はもう自分の好みで買ってくださいという価格帯のイメージになる。売価1万を超えるとマニアとプロが買って、ご家庭にあるなら「まぁいい包丁ねぇ、一生モノだわ」という世界。ただ切れ味は値段なりだなと思えるのもこの価格から。少年漫画の切れ味表現のように魚を切っても魚が気づかずに泳ぎ続けて骨になるような表現が「まんざら嘘でも…」と思えてくる。
売価で1万を超えてくると、モノとしての魅力が出てきて刃物マニアがこの世には一定数いるということが実感できる。老舗系の刃物店が参入してくるのもこの価格帯から。京都の有次、築地の正本、浅草のかね惣、筆者が愛用する築地の杉本などだ。ちょっとこれらの老舗のホントの高級品は手が出ない。和包丁に至っては10万円からというラインナップが存在する真の死して屍拾う者なし(あ、でも包丁はもらうよ)の世界がそこにはある。
筆者はもし予算1万5千程度であればこれらの老舗刃物店の上記牛刀を購入されることをおすすめする。プロが使って何十年、下手すると創業何百年という時間による選別を乗り越えた店の技(わざ)を是非体験していただきたい。戻ってこれないけどね。
購入される際は値引きがなくても一度はこれらの店に足を運ばれるか、各地の刃物専門店、東京なら合羽橋、大阪なら道具屋筋、あと通天閣のそばにも専門店があるのでぜひ実物を見て、手にとって自分にあう包丁を探していただきたい。
何が怖いってね、この文章オチがないんですよ。
まだまだ行くよぉ~
というわけで皆さん、ご自分が使う機材に詳しくなってください。PC、ソフト、入力デバイス、これら簡単でいいのでメンテナンスできるようになってください。我々のようないわゆる「情シスの人」はもちろん皆さんの機材を万全な状態にできるよう日々業務にあたっております。ですが我々は皆さんのお家までついていって24-365で待機できるわけではないんです。学生の皆さんにはPCは卒論の謝辞や参考文献、印刷製本の段階で壊れる生き物だとご認識いただきたい。ほんとに入稿寸前でディスクがクラッシュ、バックアップと思ってたUSBメモリのデータも飛んでスペースに「新刊落ちました」の張り紙って、僕らの仕事ではよく聞くお話です。PCの予備機とデータのバックアップは3重に確保して卒業まで無事に過ごしていただきたいと思います。
パンを切ったら切り口がやばいんだって
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