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HEXA BLOG

アナログゲームいいモノづくり道

HEXA BLOGその他アナログゲーム2016.4.15

赤ずきんと罠とゲーム分析

死は生の対極としてではなく、
その一部として存在しているミッツです

 

うららかな昨今の春の陽気、けだるい午後を過ごすのに最適なもの、
そう、それは何をおいてもボードゲームです。
この春から入社した初々しく輝ける新人諸兄に、これから待ち受ける
人生における数々の苦難とか恐怖とか苦難とか恐怖を教えてくれるもの、
そう、それもまたボードゲームです。
人類と動物を分かつものもまたボードゲームですし、
光あるところには、必ず闇とボードゲームがあります。

 

そこで今回は、社内でもプレイして好評だったボードゲームのご紹介と、
そのボードゲームのプレイを通じて、私流のゲームシステム分析などの
手法なんかをお伝えしたいと思います

 

今回、ご紹介するのは「赤ずきんは眠らない」
メルヘンチック&シンプルなルールながら、情報秘匿とジレンマの楽しさを
手軽に楽しむことができるというギャップに富んだ秀作となっています

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※これがパッケージ。童話本の装丁風のボックスが面白い

 


 

【ルール紹介】

このゲームでは参加プレイヤーは3~6人、
1ラウンドごとに各プレイヤーに役割カードが配られます。

 

役割が赤ずきん、親ブタ、子ブタ役の人たちは
 A:オオカミに襲われずに、夜を寝ることができれば点数
 B:オオカミに襲われた時、トラップで撃退できれば点数

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※すべてを悟りきった厭世的赤ずきん嬢。その瞳は何を映しているのか
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※豊富なビタミンB1、B2たち。口内炎予防の強い味方だ

 

役割がオオカミ役の1人は
 C:寝ている人を襲えば、相手の点数を減らして自分に点数
 D:トラップをしかけてる人を襲ってしまうと、自分の点数が減る

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※グルメ系一匹狼。この豚バラ煮込みはできそこないだ、食べられないよ

 

役割カードを全員に配り終わったら、
オオカミ以外の各プレイヤーは、おうちタイルという板を手元に隠しながら
そのタイルを「おやすみなさい」か「トラップ」のどちらかの面を上にして置き、
役割カードでタイルを隠します。

 

彼らにとっては、オオカミが襲ってくるようなら「トラップ」で迎撃したいですし、
オオカミが襲ってこないと読んだら「おやすみなさい」で眠りたいところです。

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※おうちタイル。オオカミを見る赤ずきんの養豚場のブタでもみるかのような目

 

オオカミ役の人は、全員がタイルを伏せ終わったら
プレイヤー1名を襲う対象として指名します。
もちろん、トラップをしかけてる相手を避け、寝ている人を襲いたいところ。
さらに、プレイヤーの現在の点数によって、有効に襲う相手も変わります。

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※全員がタイルを隠したら、いよいよオオカミの出番。トラップの家を避けて襲うことができるのか?

 

襲われたプレイヤーは、伏せていたタイルをオープンします。
「トラップ」なら、オオカミの襲撃は失敗し点数が減り、しかけた側は点数が増えます。
「おやすみなさい」なら、オオカミの襲撃は成功して点数が入り、相手は点数が減ります。
この時、増減する点数は赤ずきんなら3点、親ブタは2点、子ブタは1点です。
つまり役割によってリスクとリターンが違うわけです。

 

上の襲撃の解決が終わったら、他のプレイヤーもおうちタイルをオープンして、
もし「おやすみなさい」を設置していたら、それぞれに点数が入ります。
この時に増える点数も、赤ずきんなら3点、親ブタは2点、子ブタは1点です。

 

最後に食われたプレイヤー、または食いそびれたオオカミ役に役割カードを集め、
そのプレイヤーが役割カードを好きに配って次のラウンドをはじめます。
誰かの点数が10点以上になったら、そのプレイヤーの勝ちです。

 


 

【ゲームの分析】
このゲームはとてもシンプルな仕上がりをしています。
ボードゲームに詳しくないプレイヤーや子供にも薦めやすいですし、
新人ゲームデザイナーが分析をする上でも、分かりやすい教材です。

 

さて、これからプレイしたゲームを分析するわけですが、
ゲームを分析する時、自分が特にやりやすい方法をご紹介しましょう。
それはこういう風に考えることです

 

 「このゲームは
  どんなルールにしたら台無しにできるかなゲヘヘ」

 

なので、これから「赤ずきんは眠らない」を台無しにするつもりで
ここからの分析は進んでいきます。
やっていけばわかりますが、別に悪意をもってそうしているのではなく、
これが実にそのルールであることのありがたみを感じさせてくれるのです

 

《シンプルな管理リソース》
 本作を素晴らしくシンプルにしている一因は、
 各プレイヤーが管理しているリソースが「点数」のみと、少ないこと。
 台無しにするなら、まさにこの少なさが台無しにできるでしょうゲヘヘ。

 

【台無しルール】
 「点数は赤+青+緑の3種類、その中で2色が10点になれば勝ち。
  ラウンドでの得点が何色で入手できるかはランダム」

 

 入る点数が必ずしも勝利に直結しなくなり、
 寝るかトラップか、誰を襲うか、どこに役割カードを配るかという
 本作の魅力であるシンプルなジレンマを台無しにしてやりました!
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 どっちかというと何色の点数が入るかのランダムを楽しむ感じになってしまい
 本当に楽しんでほしいはずのニヤリとした本作のテーマを隠れてしまいました。

 

《寝るか寝ないかのジレンマ》
 本作の面白さの1つは、寝るかトラップかを選んで隠すこと
 狙うなドキドキ、とか、かかって来いウッシッシ、とかを楽しむ点でしょう。
 よろしい、ならば台無しだ。

【台無しルール】
 「おうちタイルには『おやすみなさい』『トラップ』以外に

  さらに『逃げる』『見逃してもらう』を加える。
  『逃げる』は襲われても襲われなくても0点。
  『見逃してもらう』は襲われないと+1点、襲われると両方に+1点」
 
 ということで、従来の寝るor罠の2大構造にさらに2つ選択肢を加えます。
 すると不思議なことに、本来ジレンマの選択肢はそのまま含有されているにも
 かかわらず、ドキドキとした緊迫感が失われました!

 
 2つしかない従来の選択肢の構造は、「あちら立てればこちら立たず」になり
 正解を選んだなら「正解を選んでやったぞ」という充実感、
 不正解を選んだら「もう片方を選べばよかった~」という後悔感、
 それらがすぐに分かるようになっているのです。
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 その選択肢を4つにしたことで「結局どれが正解だったの?」になってしまい
 その結果、従来のドキドキとした緊張が失われたのです。

 

《役割カードの配り方》
 個人的にこのゲームを良質たらしめていると思うのは、ラウンド終了時に
 負けた人が役割カードを集めて、任意に配るという点です。
 さあ、ここも台無しにしてみましょう。

 

【台無しルール】
 「役割カードは1ヶ所に集めてシャッフル、各自がランダムに引く」

 

 こうすることで、オオカミ役も赤ずきん役になる人もランダムになります。
 つまり、10点に到達できたのが
 「たまたまオオカミ、赤ずきんを引いた時に勝てたから」感になります。
 もともとのルールでは、負けた人が役割カードを配ることで、
 “ちくしょう、負けたけど役割カード配りで、次ラウンドを都合よくしてやる
 のテンションアップを担っていた部分も消えてしまいましたゲヘヘ。
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【総括】
 ということで、「赤ずきんは眠らない」の紹介とゲーム分析でした。
このように、台無し分析をすることで、
そのゲームがそういう形であるありがたみのようなものを感じたり、
このゲームデザイン上でランダム要素は廃してすべてプレイヤーの
選択によって形作っていきたいというポリシーが見えたり、
自分がゲームを作っていくうえでの参考にする点が見えたりします。

 

 ゲームを遊び終わった時など、このようにルールを台無しにしながら
ありがたみを感じるという鬱屈した愛情をそそいでみましょう。
ゲームの攻略方法を考えられるばかりでなく、
遊び手から一歩出て、作り手の領域を垣間見ることもできますし、
ボードゲームに限らずコンシューマからスマートフォン向けまで、
およそどんなゲームを作るうえでも、どういう風にプレイヤーの感情を
コントロールするかを理解する大切な教科書にもなってくれるでしょう。

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