厳冬の候、いかがお過ごしでしょうか。
たけき者も遂にはミッツです
いわゆる「ゲームの作り方」について学ぶための本というと、
一言では表せず、実態はとても色んな本があったりします
例えば……
・キャラの3Dモデル作成の本、
・レベルデザインの本
・ゲームクリエイターの仕事に関する教本
・ゲームアイデアのネタ本
・ゲーム業界の巨匠たちの体験録
・プログラム言語やグラフィックエンジンの本
・RPGツクールの使い方の本
これらは総じてどれも立派な「ゲームの作り方」の本です。
そしてどれも全然違うアプローチでゲーム作りを紹介します。
あまり、扱っている書籍が少ない分野の1つに
いわゆる「ルールの作り方」を扱った本というのがあります
自分なんかはよくそういう本を本屋で探してみたりするのですが、
中身を読んでみると、ちょっと知りたかったこととは違った内容で、
う~んと落胆することも多い次第です。
今回紹介する『Half-Real』という本は、昨年発売していた
数少ないゲームルールにフォーカスした珍しい本の1つなのです
よっ、待ってました
※タイトルのせいでSF小説に見えて、表紙帯がないとゲーム開発の本とも分からない
実は、この本よりも以前に、ゲームルールの作り方を事細かに扱った
有名な本に『Rules of Play』というのがありました。
これはこれでゲームのルールをとても深いところまで掘り下げた
大切な本なのですが、高額(上下で8800円)、その殺人的な分厚さと
難解でモゴモゴした気持ちになる文体、縦書きという手引書に珍しい
書式と、なかなか精神破壊してくる禁書でもあります
はたして、何人のゲームデザイナーが、この禁断の知識に手を出し
心折られてきたことでしょうか…。
私自身、下巻はもう頭に入りきってなかったような気がします
※厚さに加えて上下巻の圧倒的『Rules of Play』。腕につけて盾によし、浅漬けの漬物石によし
そこで、前述の『Half-Real』なのですが、
こちらは『Rules of Play』ほど分厚くないですし、また1冊完結です。
それに、『Half-Real』の前半部は『Rules of Play』でも扱った内容を
今風に整理したのがメインで、内容もヒケをとらない深さでした。
特に「ゲームに対する新定義」は、これまでに方々の論文で提唱
されていたものを整頓して6つに総括したものですが、
いわゆる「ゲーム性」という謎単語で終始しない、とても明確な形に
整えられていて、おおむね腑に落ちる気持ちの良いものでした。
また、『Half-Real』が従来のゲームデザインの本とけっこう珍しげな
スタンスを取っているのは、本書が「コンピュータゲームにおける
ルール」をかなり専門として扱っている点でしょう
(他のゲームデザイン本は、古典ということもあってアナログを主軸に
デジタルを一分野として扱った書き方が多いのです)。
なかでも、『Half-Real』のタイトルのとおり、コンピュータゲームが作る
“半分現実、半分虚構”というゲーム内フィクションへの考え方は、
ルールを作る人だけでなく、ゲームのUIをデザインする人にとっても
一読してみてほしいと思います。
ゲーム画面の3Dフィールド上で光る青い矢印が納得できるものとして
映るか、違和感のあるものとして映るか様々な角度で論じてます。
このようなコンピュータゲームにおけるフィクション作りの心構えや
捉え方は、既存作品にはない新たなUIデザインをこねくりあげる上で
役立つかもしれません。
この本は、他のゲームの作り方の本のように、いざゲームを作る時に
すぐ役立つようなものではありません。
しかし、ゲーム作りによくある
・お約束を無自覚に踏襲してしまっていること
・なぜか面白くならないゲームのルール
などを振り返り、正しい形か吟味する時に考えを明確にしてくれます。
こうした本を読んでおいて、自分の中にある「ゲームではこれが当然」を
一度きちんと整理しておくのもいいでしょう