春はあけぼの、やうやう白くなりゆくミッツです
ゲーム開発は近年では1年でも短期、ゆうに2~3年という規模が
通例とされる向きもあります。
それはつまり、1つのゲームを完成まで導く経験は、2~3年プロジェクトに
従事しない限り、獲得ができないということでもあります
でも、プランナーなら、1つでも多くゲームを完成まで導く経験と苦悩を
獲得し、次のゲーム開発に向けての糧として欲しいところ。
そこで自分がオススメするのは、小規模なオリジナルゲームの開発です。
コンピュータゲームでもアナログゲームでも構いません。
必要なのは、メカニクスを自身で築き上げるまでのフローを体得することです。
そこで自分も、ハタウチさんに倣い「オリジナルのカードゲーム」を作ってみようと。
しかし、ただ作った内容を紹介するのではなく、これを何回かのシリーズにして
カードゲームのルールが完成するまでの紆余曲折と苦悩と挫折の変遷をお伝え
することに、記事の主眼を置こうと思います
なので、栄えある今回の第1回、ご紹介する『ヘキサグラム(仮)』は
発想からルール構築まで2時間で仕上げた、自分でプレイしてもイマイチ面白くないダメゲー
であることをまずはご了承ください。
【ヘキサグラム(仮)】
■コンセプト
・ご家庭にあるトランプ1セットのみでできるお手軽さ
・六角形のイメージを使う
・パーティーゲームより、ジレンマと駆け引きを高めなコアゲームを目指す
・実行することはシンプルに1つ。だけど戦略の創発性は高く
・偶然よりも、選択が与える必然のほうにゲームの重きを置く
・加算以外の面倒な計算をしない(減乗除がない)、桁上がりもない
■ルール説明
このゲームは赤の王族と黒の王族のどちらかの陣営に所属し、宮廷内の支配権を
根こそぎ奪うべく、自分の手先を6ヶ所の盤面に送り込んでいくゲームです。
▼人数/道具
2、4、6人 トランプ1セット(A~K札+Joker2枚=54枚)
▼準備
カードをシャッフルして山札を作り、最近、王城に足を運んだプレイヤーは
山札から1枚を引き、自分の前に表にして置きます。
これが黒のカードならこのプレイヤーは黒陣営、赤なら赤陣営になります。
そこから参加者は時計回りに、赤、黒、赤、黒…と交互に各プレイヤーの
陣営が自動的に決まります。
次に、各プレイヤーに手札を6枚配ります。
最後に、山札から6枚を引いて中央に六角形になるよう並べて、
この6ヶ所を「盤面」にすることで、ゲームの準備は完了です。
※初期の準備が終わった状態
※盤面同士は、ぶつからない程度に距離を開けます
▼勝利条件
全プレイヤーの手札が全てなくなった時、
盤面の6ヶ所中、過半数以上の支配権を得ることで、その陣営の全員の勝利です。
支配権を得るには、高い数字の自陣営色のカードを一番上に重ねることが大切です。
▼手番の処理
手番は、最近王城に足を運んだプレイヤーから時計回りに進行します。
手番になったプレイヤーは手札から1枚を選んで、盤面の1ヶ所に、カードを上に
重ねるように配置します。
ただし、2枚以上重なっている盤面では、そこの最新の2枚が「昇順」か「降順」の
並びになっている場合は、その昇順、降順に従わなくてはなりません。
例えば「赤の5」の上に「黒のJ」がある場合、J以上、つまりJかQかKしか配置できません。
逆に「黒の7」の上に「黒の3」がある場合、3以下、つまり3か2かAしか配置できません。
例外的に、同じ数字が並んだ場合は、この昇順降順はなくなった状態で、どちらへも
配置することができます。
1枚のカード配置が終えたら、手番を終了し、次のプレイヤーの手番に回ります。
※手札を盤面に配置していく様子
※重ねる時は、下のカードも見えるように置きます
スキップ
自分の手札がまったく配置できない場合、手札を全て開示して、自分が配置できない
ことをみんなに見せます。その後、手札を再び手元に戻して1枚を捨て山に捨てることで
手番をスキップ(終了)することができます。
JOKER
JOKERだけは特例の効果を持っています。
JOKERはどの盤面にでも置けます。
プレイヤーが自分の手番で、手札からJOKERを配置したら、置かれた盤面にある
一番上のカードとJOKERを一緒に捨て山に破棄されます。
つまり、盤面の一番上にあるカードを破壊する効果があるということです。
▼ゲームの終了
全プレイヤーの手札がなくなったら、ゲームは終了します。
盤面6ヶ所のうち1ヶ所を選んで、その地の支配権について判定をおこないます。
選んだ1ヶ所の一番上に重なっているカードの色が、支配権を主張できる陣営です。
その両隣の一番上に配置されているカードを確認し、両方とも敵陣営の色だった場合、
数字を確認し、どちらよりも低い場合は敗北として、その地のカードはすべて裏返します。
裏返さないですめば、その地の支配権を確立したことになります。
なお、例外的に、Aはどの数字よりも高いものとして扱います。
※手全員の手札がなくなったら、判定します
※ダイヤの3は両隣に負けたので、支配権を得ずに裏返します
これを全6ヶ所で確認した後、支配権を確立している場所だけを数えて、
過半数の場所を支配していれば、その陣営に所属するプレイヤーたちの勝利です。
こうして2時間で作った『ヘキサグラム(仮)』ですが、自宅でも何回かプレイしつつ、
これが、“面白くなるかもだけど、なんかイマイチ” であることを重々認識した上で、
会社に持って行って、他の人にテストプレイをしてもらいました。
もし面白くなる予感もなかった時は、この段階でボツにします
他の人にテストプレイしてもらう時は、
ルールの導入説明に問題ないか、コンセプトはきちんと踏めているか、人間工学的にも
これはプレイ可能なのか、といった基礎部分はもちろんですが、
より核心を突いて、“このゲームがつまらない理由”、“このゲームが面白くなりそうな所”を
忌憚ない意見を色んな人からもらうことで、ゲームは成長していけます。
時には、自分が予想しなかった範囲で化学反応的な変化を遂げることもありますし、
ピタリとフィットさせた時、とても気持ちよいものなのです。
あの何か降臨した瞬間
こそが、自分のプランナーやってて良かったと思う時です。
なので、プレイの意見をズケズケ言ってくれる友人や同僚の声と、そうした意見によって
ズタズタにならず、むしろ嬉々とするマゾ魂
(笑)こそ、プランナーには大切です。
さて、今回のゲーム『ヘキサグラム(仮)』は、すでに多くの感想と課題が並んでいます。
私のマゾ魂も、ときめいてまいりました
×手札が少なくてやれることが狭い
×手札の良し悪しで、勝てるか負けるか半ば決まる
×大勝、大負けが少なく、引き分けになりやすそう
●逃げ切りゲームとしては楽しい
●切り札を秘匿しているのが楽しい
×見知った相手との対戦には良いが、見知らぬ相手との対戦ではワイワイにならない
×終盤までのゲーム展開が平坦な感じ
×様子見になりやすい
×最後の集計がやりにくい
×世界観にはフィットしていない
●ゲーム内容はストイック
●昇順や降順の方向付けの戦略は面白い
×自分の陣営を間違えやすい
●弱いカードが勝てるのは美しい
●参加プレイヤーが多いほうが戦略や盤面の状況は広くなる
※テストプレイの風景
※このあとの感想会が、ゲームの良し悪しを大きく左右します
ここから、どの課題に対してどう解決し、どの問題点は目をつぶり、どの良かった点を
どう伸ばしていくか、その舵取りを中心に次のブログでは取り上げたいと思います。
それでは、『ヘキサグラム(仮)』の行く末に、みなさま乞うご期待