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HEXA BLOG

いいモノづくり道

HEXA BLOGいいモノづくり道2022.6.23

「分からない」の用法

我に支点をあたえよ、されば地球をもミッツです🍷
先日の「Xbox & Bethesda Games Showcase」でゲームのリリース情報などが
色々と更新されて期待に胸躍る今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。
自分的には『Ara: History Untold』という文明ストラテジーがどんなユニークな
切り口とメカニクスを持っているのかが気になって夜しか眠れません🛌

さて、あなたがゲームをプレイしている時、あるいはゲームのレビューを読む
機会があるなら、そしてあなたがゲームを開発しているのであれば、
よく遭遇する言葉に、「このゲームの○×が分からない💦」「あのゲームの○×が
分かりにくい💦」というものがあることでしょう。

以前には「難しいの用法(※リンク)」についてを、このブログに掲載したことがありますが
それと同様、「分からない」もまた、開発上で解釈と対応の難しい言葉です。
もちろん、ゲーム開発中にテスターの方からこの感想があった場合、どういった
点が分からなかったのか分析することになるのですが、それをうまく説明できる
テスターは多くいませんし、理解を誤ると解決の図り方をも間違え、見当違いの
無為な工数が生まれてしまうかもしれません。

しかしながら、逆に、この「分からない(分かりにくい)」をうまく活用した時、
それはゲームをより良いものにしてくれるよう、かなり高い確率で繋がります。
そこで今回、記事ではこの「分からない」についてどんな風に捉えていくものか、
自分の経験なりに、もう少し深く掘り下げてご紹介してみたいと思います

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🔑分からないの3つの分類
まず、私は「分からない」に関して3つの分類があると考えています(もちろん、
これは便宜的なものです‼ 要因自体はそのゲームによって千差万別ですから)。
というのも、逆に「分かる」という視点に立った時、ゲームデザインが遊んでいる
プレイヤーに対して「分かってもらう」ために3つの工程があるからです。
それは「①認識」「②解釈」「③文脈」です。

これはある記号を受け手に対して理解させるためのプロセスで、
1:受け手はまずその記号の存在を認識し、
2:その記号が意味する情報を解釈し、
3:それらの認識と解釈を記憶蓄積して文脈として応用できるようになる

みたいな流れがあるとされています。
そこで、このプロセスをゲームデザインの話に転用して、ゲームデザインにおける
どのプロセスに「分からない」があり、それはどのような手法で解決を図れるのか
ここでは説明の事例として「敵の倒すやり方が分からない」というケースを参照に
として併せて紹介してみましょう

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💡認識と「分からない」
認識とは「プレイヤーにそのデザインの存在を知覚させる」ことです。
認識されなかったゲームデザインは、プレイヤーの意識、行動や選択に何も影響を
あたえなかったことになります。
例えばそれが、プレイヤーに駆け引きの面白さを生むはずの優れたルールだったら
それがプレイヤーに認識されない時点で、ルールの役目を達成しなかった無価値な
ものになってしまうでしょう(例えば「敵を連続攻撃で倒す」ゲームなのに斬撃を
1回ずつしかあたえておらず敵をなかなか倒せない=倒し方が分からないといった
ケースは、連続攻撃というシステムを認識されなかった悲劇です)。

このような「認識」できないことの「分からない」だった場合、解決をはかるには
例えば、ルールが駆動された時にそれを適切にプレイヤーに伝える工夫を加えたり、
プレイヤーの目線があるだろう近隣へと表示を動かすなどの調整を検討することに
なるでしょう(連続攻撃のボタンガイドをキャラ頭上に出したり、1回の斬撃でも
3ヒットになるなどして連続攻撃の存在を見せたり…)。

ちなみに、逆に認識させないほうが良いルールもあります。敵がドロップするレア
アイテムの抽選率なんかは、表示してもプレイヤーに何も選択肢を生まないですし、
余計な情報を省くために出さないルールも多いでしょう。余分な情報の削ぎ落しを
きちんとしないと、かえって重要な情報が認識されなくなってしまうのです。

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💡解釈と「分からない」
解釈とは「プレイヤーにそのデザインを推測させ理解を促す」ことです。
解釈されなかったゲームデザインは、プレイヤーに十分な理解と利用をさせられず
一種の不快感をあたえることになります。存在を認識できたにも関わらず、それを
自分のプレイに活用できなかったストレスはより高いものになります(連続攻撃は
認識して実行できたが、ダメージが一撃の時と変化ないと、何のための連続攻撃か
理解できず、連続攻撃を「やらされている」ことにイライラしたりする…)。

このような「解釈」できないことの「分からない」だった場合、解決をはかるには
例えば、覚えるべきルールをいくつかの細かい情報に分解して段階的に学習させる
プロセスに組み直したり、プレイヤーがルール構造を類推できるモチーフや用語を
探したり、いっそルール構造そのものを要素を削って単純化させたり広く知られる
ものへ変更するといったことが挙げられます(連続攻撃は一撃よりダメージ総量を
多くしたり、動きを大きくして多数の敵を巻き込む目的に変えたり)。
この解釈における「分からない」については、大ナタを振るわないと解決できない
ような問題であることも多く、発見するとけっこうヒヤヒヤします💦

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💡文脈と「分からない」
文脈とは「プレイヤーにそのデザインの理解を記憶させ応用させる」ことです。
文脈が分からないというのは、ある1つのルールが結果Aを導くのをプレイヤーが
体験した後に、類似した状況にその知見を応用しようとしてみたところ、そっちは
異なる結果Bになって、プレイヤーの「応用してやったぜ」といった期待+快感を
裏切っている状態のことを示します(敵Aには連続攻撃が入ったが、敵Bにはこの
連続攻撃がなぜかスカってしまうなど…)。
経験を応用できるようにしたり、挙動を統一させたり、あるいは異なる結果が出た
時の状態が少なくともプレイヤーに納得できる状態(敵Bは敵Aより重量が重くて
空中の連続攻撃が入る前に落ちちゃうのを目で見て分かるようにするなど)

このような経緯であるため、文脈についての「分からない」が発生したような場合、
プレイヤーは傾向的に分からないという言い方よりも、「分かりづらい」といった
奥歯にモノが挟まった表現をすることが多いです。
そのあたり、「分からない」なのか「分かりづらい」なのかを識別できたりすると
「解釈」と「文脈」のどっちの問題かが分かり、対応の精度も格段に上がります

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📝総括:良い質問は良い回答に勝る
このように「分からない」というプレイヤーの言葉1つに多くの意味が含まれると
自分としては考えていまして、テストプレイの結果でこの言葉が口から出た時や
集計したアンケートに書かれていたりした場合、直接当人に聞きに行ったりします。

ちなみに、このような時にテストプレイヤーの方とコミュニケーションをとる場合は、
その尋ね方にも十分な注意を払わなければいけません
プレイヤーが直感で覚えた感覚というのはカスタードプリンより柔らかい存在であり、
質問の仕方を誤ったり、こちらで理解したつもりの情報を押し付けると簡単に崩れて、
プレイヤーという顧客が本当に求めていたものと違うブランコが組みあがります💦
特に気をつけなければならないのは「プレイヤーに解決策を考えさせないこと」で、
とりわけ頭の回転が速いプレイヤーほど解決を先回りして考え、解決法のため課題が
捻出されるという本末転倒した現象が起きることもあります

かように「分からない」は扱いに難儀するものではありますが、うまく活用すれば
その開発中のゲームを「分かる」ものに変える重大なきっかけでもあります。
今後とも自分的に「難しい」「つまらない」とともに「分からない」とも良き関係を
築いていきたいものだと思います。
ちなみに、今回はこれをゲームデザインという対象に適用をして論を進めていますが、
この考え方自体はUIやイラストやレイアウトなど、ほとんどの「デザイン」に対して
適用できる話かとも思いますので、ゲームデザイン以外の範囲での「分からない」が
あった時にも、ぜひご活用、応用してみてください。

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