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HEXA BLOG

デザイン

HEXA BLOGデザイン2019.5.22

affordanceとレベルデザイン

こんにちは。

東京開発ゲームデザイナーJ4です。

今日は、affordanceという心理学の概念とレベルデザインについて、簡単に書いてみようと思います。

 

affordanceとは

「affordance」とは、アメリカの心理学者James J. Gibsonによる造語で、「動物と環境の間に存在する意味」を指す言葉です。

ある物に対して人間はどういった行動ができるのか、例えば、ドアがあるということは、「人間がそれを開けて中に入ったり出たりすることが可能である」ということです。これを、人間とそのドアの間に「affordanceが存在する」と生態心理学では表現します。

ゲーム開発では、主にAIの設計などに用いられる概念になります。

 

違う意味でのaffordance

上記の本来意味でのaffordanceから派生した概念として、「percieved(知覚された) affordance」というものがあります。

これはアメリカの認知科学者であるD. Normanが彼の著書「The Design of Everyday Things」などで良いデザインの条件として示した概念で、ドアの例えで言うと、ドアの取っ手の形を見ればそのドアをどう使うのか(取っ手を回せば開けられるとか)がわかるべきとし、そのような状態を「A(物)はB(行動)をaffordする」と表現します。ここでaffordという単語は、suggestに置き換えても成立します。つまり、デザインそのものを以って使い方を提案してくれてこそ、優れたデザインであるという考えです。

こちらのaffordanceは、主にUIデザインやレベルデザインに適用できる概念になります。

 

レベルデザインにおけるaffordance

それでは、本題になりますが、レベルデザインでaffordanceはどう適用されるのか?もう少し具体的な例で説明したいと思います。

・梯子

ゲーム中で梯子を発見すると、多くの人はまずそれを上ることを試すはずです。これは多くの人が現実世界での経験として「梯子は上ることができる」というルールを体得しており、梯子と自身の間にaffordanceが存在していることを認知しているからです。

ここで、もしプレイヤーキャラクターに梯子を上る能力が備わっていないとなると、プレイヤーにとってそのゲーム世界は、自分の経験、知識とはかけ離れたもので、違和感のある納得できないものになってしまいます。ただ、最近のゲームでは梯子があるのに上れないといったケースはあまり見かけないので、少し違う例をもう一つ挙げてみましょう。

プレイヤーキャラクターは梯子を上ることができる。が、ゲーム中に存在する全ての梯子を上れるわけではない。たまに見かけることがあるケースです。上れる梯子とはデザインが少し違っていたり、梯子に類似している地形、構造物であるにも関わらず上れないなど。全く梯子に上れないケース程ではないものの、こういったものがあると、プレイヤーは混乱したり、違和感を感じます。

そもそも、こういったものは最初から作らない(=全ての梯子とそれに類似する物は上ることができる)ことが最善の解決策ですが、どうしても作る必要がある場合は、それは通常の梯子とは違うということを強く認識させなければなりません。(例えば、破壊されていて使うことができないなど。)

 

・カバーポイント

敵の銃撃を凌いだり、潜入時発見されない為に、物陰に隠れることができるとします。最低1m高さがあれば、プレイヤーは、しゃがんでその後ろに隠れることができるとしましょう。

この場合、レベル上には、0.5m以上1m未満のオブジェクトは可能な限り配置しないことが望ましいです。仮に、高さ0.85mのオブジェクトがあった場合、ある程度離れた距離から見ると、肉眼ではこれが隠れられるものなのかそうでないかを判別することは難しくなってきます。すると、実際そこでしゃがんでみるまではそれがカバーポイントとして機能するかしないかがわからず、攻略プランを立てることも困難になります。これは、多くの場合、ゲームデザインとしてあまり好ましいとは言えません。

カバーポイントとして正しく機能させる為には、「この物体は隠れる行動をaffordする」ということが一目でわからなくてはいけません。その為に、余計なノイズを極力排除することで、affordanceを明確にさせるのです。

 

・現実世界に存在しない特殊な仕掛け

魔法の力で動く物体など、現実には存在しない、そのゲーム世界独自の仕掛けがある場合にも、一目見ればそれが何なのかを類推できるデザインにすることは重要です。例えば、上下に動く浮遊ブロックには上下の矢印を連想させる意匠が施されているなど。

ただ、現実に存在しないものを作るとなると、そう簡単にはいかないこともあるので、もし最初からそのようにデザインすることが難しい場合は、プレイヤーにその物体で何ができるのかどう使うのかを丁寧に教えることが大事になります。つまり、我々が現実の人生でそうであったように、ゲーム世界内のオブジェクトが「何をaffordするのか」をプレイヤーの中で確立させる必要があります。

 

最後に

いくつか簡単な例でaffordanceとレベルデザインについて説明しましたが、もちろんこれら以外にも様々なアプローチがあると思います。基本的な考え方の一つとして、こういったものがあるということだけ覚えておくと良いでしょう。

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