HEXA BLOG

アナログゲームいいモノづくり道

HEXA BLOGその他アナログゲーム2015.8.25

ゲームデザインができるまで…(創造編)

今は昔、竹取のプランナーといふ者ありけり
名をば、ミッツとなむ言ひけます

 

当ブログでは3月5日からの5ヵ月半で
 
『ゲームデザインができるまで…』
 『ゲームデザインができるまで…(死闘編)』
と記事を重ねて、オリジナルのトランプゲームができるまでの不恰好な
紆余曲折を掲載してきましたが、今回で最終回です
はたして、オリジナルのトランプゲームは完成を見たのでしょうか?
はたまた打ち切り連載の憂き目となったのでしょうか?
2時間の思いつきから始まったゲームデザインもいよいよ佳境。
では、前回の流れから開発を続けてまいります。

 


 

【第1章:意見分析】

前回と同様、ポジネガの色んな意見を大別していきます。
基本的にはこの積み重ねと切り捨ての繰り返しでゲームを完成に向けます。
自分の入れたいアイデアを考えついても、終盤間際はぐっとこらえます
(その理由は後ほど説明します)

 

ゲーム様式
 ×偶数人でしかプレイできないなど、人数制限がシビア
 
カード
 序盤の手札の伏せ方を考えるのが楽しい
 ×結局、表になっているカードを使っていくようになりやすい 

推移
 序盤の手札の伏せ方を考えるのが楽しい
 ×手札と場札の状態で、負け確定の試合になることが多い
 ×終盤が確定的で盛り上がらない
 ×勝敗がギリギリになることが少ない 

勝敗
 ×盤面を6角形に並べる意味がなくなった
 集計がやりやすくなった 
 


 

【第2章:終盤の注意】

完成間近の進行では、改訂について1つ注意しなければいけません。
それは、細かい調整ばかりが続く泥沼状態に陥らないようにすることです
そのために、自分は開発終盤では以下の点に気をつけています。

 

鉄則その1
 完成させること
  当然のことですが、完成しないゲームは大きく価値を失います。
  人は作品を愛するほどに、「完成」より「完璧」を目指したくなるものです。
  だからあえて完璧を作るより、未完成を避けることに重きをおくべきです。
  このオリジナルトランプゲームの開発記事を、あえて全3部作と銘打って
  今回を最終回とするのもそのためです。
  もう一度コンセプトを見返し、それをしっかり満たしているのであれば、
  踏ん切りをつけて、コンセプト外の欠点を見逃すことも必要な決断です。

 

鉄則2
 弱いものを強化する調整はおこなわないこと
  終盤になると細かい調整が随所に入ることもあるでしょう。
  強すぎるもの、弱すぎるものなどが並ぶことになりますが、終盤になった時と、
  弱すぎるものは放置することが大切になります。
  強化調整すれば全体バランスの見直しまで手戻りが発生し、最悪エンドレスな
  泥沼状態や、完成形がかえって見えなくなることもあるのです。
  強すぎる要素はゲーム全体を破壊するリスクを持つために弱体化が必要ですが
  弱すぎる要素はゲーム上で無価値なだけ、終盤は放置する判断も考えます。

 

 

 【第3章:最後の改訂】

問題点として、改訂の焦点を当てたのは【推移】にあがっている3つ、
そして、コンセプトを壊してしまっている【勝敗】の1つ、合計4つです。
 ×手札と場札の状態で、負け確定の試合になることが多い
 ×終盤が確定的で盛り上がらない
 ×勝敗がギリギリになることが少ない 
 ×盤面を6角形に並べる意味がなくなった

 

問題点A:推移
 まずは【推移】。色んな方法を試しましたが、これまでのルールである
 12手のゲームでは、推移の問題3つすべて解決は困難と結論しました。
 しかし、逆に言えば12手ではないゲームなら解消可能でしょう。
 「盤面の4枚制限が、どっちが先に置くかの良いジレンマを生んでいる」という
 好評だった点を消してしまいますが、それでもゲームの戦略スパンを長くする
 ようにルール変更することに決めます。
 推移の3つの問題は総じて、12手の選択肢が終盤に向かって戦略の選択幅を
 集約させる方向であることに原因があります。
 そこで、戦略の選択幅を一定化させるルールを導入するわけです。
 では、改訂をする場所というのは、

 ■BEFORE
 ————————————————————————————
  ・全プレイヤーの手札がなくなったら、ゲームは終了します。
 ————————————————————————————
 具体的には、試合の終了までのルールであった上記ルールを変更し
 以下のとおりにしました。

 ■AFTER
 ————————————————————————————
  ・手番を終了したら山札からカードを手札に補充する
  ・双方が手札を破棄してパスするか、山札からJOKERを引いたらゲーム終了
 ————————————————————————————
 これにより手札は常に補充され、以前と違って終盤に向けて選択肢が集約する
 ことがなくなって、終盤が確定的ではなくなっていくと思われます。

 

問題点B:勝敗
 勝敗の問題点は明確に1つ、「6角形配置にどんな意味を持たせるか」です。
 カードを置く盤面を頂点にして線を引いても分かるように、この配置に意味を
 持たせるには、配置カード間で関係を作るしかありません。

20150825_image03

 山札が中央に来る位置上、黄のラインはユーザーに分かりにくいでしょうし、
 3ヶ所+3ヶ所を対に並べるのと差がないため、却下です
 赤ラインはどちらも頂点1つから2方向にラインを伸ばしています。
 なら、どちらを採択しても同じだけの戦略幅だろう、
 ということで見やすさをとって、赤ラインをゲームに活用することにします。
 では、どこを改訂するのかというと…

 ■BEFORE
 ———————————————————————————–
  集計はプレイヤーが交互に盤面1つずつ処理。
  交互に自陣営の支配する盤面1つのカードを手元へ入手する
  手元の貴族(絵札)が3枚以上になった時点で勝利
  手元の市民(数札)が7枚以上になった時点で勝利
 ———————————————————————————–

 まずは、残念ですが前回改訂した、上記の勝敗判定を破棄します
 かわりに隣接の頂点同士に意味を持たせるよう、以下の勝利判定を入れます。 

 ■AFTER
 ————————————————————————————
  ゲーム終了時、4つ以上の連なった支配盤面を作った側が勝利
  上記を誰も満たさない場合、一番多い枚数の支配盤面を持つ側が勝利
  上記を誰も満たさない場合、最後にパスした側、JOKERを引いた側が敗北
 ————————————————————————————

 これにより、絵札の意義はかなり少なくなりましたが、推移の側の問題でも
 手札と場札によって試合が確定的になりやすいとの指摘はあったので、
 絵札に数字以上の優位性を持たせる必要はないと考えます。
 もしも、それがテストプレイでネックになった時は、番目の勝利条件に
 絵札関連の要素を
加えるだけでも解消可能でしょう。

 

では、これらのルール改訂をおこなったところで最後のテストプレイです。
上記の4つの問題点が解消されていて、なおかつコンセプトに対する問題が
発生していないか、ここを重点的にチェックします。

 20150825_image04

テスト風景、どこが盛り上がりどころで、どこで悩んでいるかを要チェック!

20150825_image05

テストプレイ全敗のテルマエ。脳筋との自負に恥じるところない戦果

 


 

【最終章:ヘキサトライブ完成】

こうして最終的に、6つの氏族が議決を争う『ヘキサトライブ』が完成しました。
一番最初の頃のゲーム性と大きく変わっている点もありますが、
全体的に、コンセプトを崩さずに、実行することのシンプルさに比べて、
かなり駆け引きの高めなゲームができたと思います
 
もし、トランプを1セットお持ちの時には、ぜひ1回プレイしてみてください。
自分と相手の手札、それぞれどのような手札かを推測しながら、
お互いのカードの並べ方、氏族支配の駆け引きを楽しめることでしょう

 

 

 

【ヘキサトライブ:ルール説明】

 

■コンセプト
 ・ご家庭にあるトランプ1セットのみでできるお手軽さ
 ・六角形のイメージを使う
 ・パーティーゲームより、ジレンマと駆け引きを高めなコアゲームを目指す
 ・実行することはシンプルに1つ。だけど戦略の創発性は高く
 ・偶然よりも、選択が与える必然のほうにゲームの重きを置く
 ・加算以外の面倒な計算をしない(減乗除がない)、桁上がりもない

 

■ルール説明
 このゲームは6つの氏族が円卓を囲んで議決を争う中、過半数を占めるべく
 自分の陣営側につくように氏族の支配を目指すゲームです。 

 

▼人数/道具
 2、4、トランプ1セット(A~K札+Joker2枚=54枚)

 

▼準備
 トランプからJOKER2枚を除いてをシャッフルして山札を作り、ジャンケンの勝者は
 自分を赤か黒陣営かを決めます。そこから時計回りに交互に赤、黒陣営になります。
 次に、各プレイヤーに、山札から手札を6枚配ります。
 各プレイヤーは手札6枚のうち3枚を伏せ、3枚を表にして自分の前に並べます。
 次に、山札からカード6枚を、中央に6角形になるよう表向きに配置します。
 この6ヶ所を氏族と呼びます。
 最後に山札にJOKER2枚を加えてシャッフルし、この山札を中央に配置します。
 これでゲーム準備は完了です。

 20150825_image01

 

  ※準備が終わった状態、氏族同士ぶつからない程度に距離を開けます

 

▼勝利条件
 ゲーム終了時に4つ以上の連なった支配氏族を作っていた陣営が勝利します。
 カードを配置し、6角形に配置されたどの氏族を支配するかが勝負のカギです。
 

▼手番の処理
 手番は、さきほどのジャンケンの勝者から時計回りに進行します。
 手番プレイヤーは、自分か、自分の左隣のプレイヤーの手札から
 1枚を選んで(裏向きなら裏のまま選びます)、
 そのカードを、氏族の1ヶ所へ上に重ねるように配置します。

 カード配置が終えたら、空いた手札には、山札からカードを補充します。
 使用したのが表向きカードなら表向きで、使ったのが裏向きカードなら裏向きで
 補充されますが、ただし自分の手札を使った場合は、必ず表向きに補充します。
 また、どこに補充したかはきちんと分かるようにしましょう。
 補充後、手番を終了して、次のプレイヤーの手番に回ります。
 もし、ここで山札から1枚目のJOKERを引いた場合、JOKERは脇に除け、もう1枚を
 引きます。2枚目のJOKERが引かれた場合、ただちにゲームは終了します。 

 

 【昇順/降順ルール】
  2枚以上重なっている氏族に関し、その最新の2枚が「昇順」か「降順」の
  並びになっている場合は、その昇順、降順に従わなくてはなりません。
  例えば「赤の5」の上に「黒のQ」がある場合、Q以上、つまりQかKしか配置できず、
  逆に「黒の7」の上に「黒の3」がある場合、3以下、3か2かAしか配置できません。

 

 【逆順ルール】
  例外的に、同じ数字が並んだ場合は、この昇順⇔降順が逆転します。
  それまで「赤の5」「赤の7」「黒の7」と並ぶ場合、次は7以下しか配置できません。
  昇順降順が決まってない氏族に同じ数字を重ねた場合、決まってない状態のままです。

 

 【パス】
  手札から引いたカードがまったく配置できない場合、そのカードを開示して、自分が
  配置できないことを全員に見せ、そのカードを破棄して手番をパス(終了)します。
  パスの後は、通常どおりに山札から空いた手札にカードを補充します。 

20150825_image02

  ※氏族に配置していく様子、重ねる時は下のカードも見えるように置きます

 

▼ゲームの終了
 山札から2枚目のJOKERが引かれたら、ゲームは終了します。
 また、参加者全員がパスして一巡した場合も、ゲームは終了します。
 そして以下の条件に従って、勝利の陣営を判定します。
  ゲーム終了時、4つ以上の連なった支配盤面を作った側が勝利
  上記を誰も満たさない場合、一番多い枚数の支配盤面を持つ側が勝利
  上記を誰も満たさない場合、最後にパスした側、JOKERを引いた側が敗北

 


 

以上、オリジナルカードゲーム制作にまつわる5ヵ月半の顛末になります
いやはや、思えば遠くへ来たもんだ。
テストプレイヤーのプランナーからは
  ・ちょっとしたルールの追加でゲームの印象が大きく変わった
  ・いくつかのルール上の制限がむしろ、よい形に戦略性を広げていた
  ・伏せカードが使いどころの難しいキーカードとして機能している
  ・形勢逆転の可能性が常に発生するようになった
  ・異なる2種類の勝利条件によって、意外な勝敗を決するようになった
など、本作がゲームとして機能していることを踏まえた感想ももらえました。
これらの感想も含め、一番最初の時になぜそれは実現されなかったのかを
振り返ったりして、自分のゲームデザインの流れを一々確認しておくと、
自分流の作り方のようなものを理解でき、得意不得意などが分かってきて
次の作り方に向けての糧や、自分の流儀に一本スジを作りやすくなります

 

ところで、本記事で触れてますが、完成にこぎつけたこと自体がとても重要です
ゲームデザインは、完成した10種類を並べても、まぁ8種くらいは駄作なもの
それでも、1つでも多く完成させることで、燦然と輝く1種類のゲームデザインが
生まれる確率をあげることがゲームデザイナーの努力というものです
それは、未完成品を100種類ほど構想するよりはるかに有用な失敗です。
上述のような、自分の流儀を見出すのにも、まずは完成ありきなものです

 

どうか、みなさんも構想にあるゲームはぜひ完成に向けて奮闘してみてください。
これまでの記事のように、明確なコンセプトを立て、明確なルール改訂を重ねて
できあがる失敗作なら、多くの実りある経験を与えてくれるはずです

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