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いいモノづくり道

HEXA BLOGいいモノづくり道2019.2.15

スポーツカーをモデリングしよう!

みなさんこんにちは!
新卒入社3年目にして背景アーティストからテクニカルアーティスト(TA)になったタカガハラです。今回もヘキサドライブ大阪スタジオからお送りいたします。

かれこれ当ブログも登場5回目なわけでして、これまでの記事を振り返ってみたのが先週のこと。

廃線にいこう!(2017.8.3)
高速道路を歩こう!(2017.12.8)
書体の世界を覗いてみよう!(2018.5.1)
続・書体の世界を覗いてみよう!(2018.9.12)

……この3年間でアーティストらしい記事を一度も書いてないな?と気付かされた次第です。あえていえば初回に「森羅万象の力」などと偉そうなことを述べたきりではありませんか。

このままでは最新の教育を受けてきた後輩たちから「森羅万象おじさん」などと呼ばれる未来もいずれあるかもしれません。そろそろなにかそれらしい記事を書かねばなるまいと決意を新たにしたところであります。

                                            

いつもどおり、ここまで読み飛ばしていただけましたでしょうか?
今回もどうぞよろしくお願いします。

さて、カーモデリングについてです。

「メカ」で「乗り物」で「カッコいい」(重要!)とくれば憧れる人も多いスポーツカーですが、
3DCGアーティストの個人制作や学生さんの就職作品にもよく選ばれるモチーフのひとつです。

この私も2014年にインターンシップへエントリーした際はポートフォリオでスポーツカーのモデリングをアピールした一人です。その時の作品がこちら。

※2014年夏頃制作(Windows7/Maya2013/mentalray)

いま見ると、フォトリアルを目指した作品としては正直言って「うーん……」と言いたくなるくらいにはいかにもCGらしい一枚です。

数年後に趣味でもう一度チャレンジしたカーモデリングではこのようになりました。

手前味噌で大変恐縮なのですが、格段にリアリティが高まったと思いませんか?

そこで今回は、カーモデリングで気をつけるポイントを後悔と反省を織り交ぜながらお話してみたいと思います。主なターゲットは就職作品として自動車を始めとしたハードサーフェースモデリングにチャレンジされる学生さんを想定しています。

▼なぜ「うーん……」と言いたくなるのか

冒頭の作例ですが、造形が特にイマイチなところはどこでしょうか?

いま挙げるなら、例えば上記のようなところが気になります。シルエットに関していえば大まかにはそれらしいモデリングですが、細部を見ていくと形状の再現が正確でないことがわかります。

問題点を大きく3つに分けるとすれば、
①なめらかなカーブを少なすぎる分割で無理やり作っている
②パーツの存在が記号的すぎる
③そもそもパーツを省略しすぎている
といった見方ができるでしょう。これがイマイチの原因です。

▼イマイチをどう克服するか

3つ上げた問題点を順番に解決していきましょう。

①なめらかなカーブを少なすぎる分割で無理やり作っている


結論としては、なめらかな形状を表現するだけのメッシュ分割が不十分だと感じたら分割数をきちんと増やしましょう。必要のないポリゴン数縛りは形状の精度を落としてしまうだけです。

Mayaではビューポート上でスムーズメッシュをプレビュー(※)できるので、人間がコントロールする頂点数を必要最低限に抑えつつ、サブディビジョンサーフェス実行後の曲線/曲面が確認できます。
※下記のホットキーがたいへん便利です。
[0]:Default Quality Display(デフォルト表示)
[3]:High Quality Display(スムーズメッシュ表示:分割レベルの初期値は2)
[PageUp]:Smoothing Level Increase(スムーズメッシュ表示の分割レベルを1段階上げる)
[PageDown]:Smoothing Level Decrease(スムーズメッシュ表示の分割レベルを1段階下げる)

ということで、今回は形状表現を追求するため、自分でコントロールできる範囲内でポリゴン数に制限は設けないことにしました。「パッと見」でポリゴンの分割が感じられないレベルが一つの目安です。ローポリゴンのモデルは必要に応じて後から作ることにします。気になる人は”retopology”(リトポロジ)で調べてみてくださいね!

②パーツの存在が記号的すぎる

要するに「作るからにはきちんと作りましょう」ということです。

金属加工の分野ではほとんどの場合「面取り」というエッジ処理が施されます。C面取り・糸面取り・R面取りなどの種類があり、特に自動車部品では表面処理で有利なR面取りが多く見られます。R面取りはライティングもしくはカメラの様々なアングルに対してハイライトが豊かに現れ、物体としての存在感を高めてくれる大切な要素となります。

今回の古い作例では「ハードエッジ」のシェーディングだけで角を表現したつもりになっていますが、Mayaの機能では「ベベル」や「折り目」ツールなどで表現できますからしっかり再現しましょう。

次にこの部分、「ヘッドライト」や「フロントコンビネーションランプ」などと呼ばれる灯火器が装着されています。灯火器はハウジング・レンズ・灯体・シール材などの組み合わせですから、モデリングを省略すればするほど情報量が犠牲になり、説得力を失います。

また、特に2000年代以降の自動車部品はボディと一体的に見える意匠が多いとはいえ、これらはもちろんボディから独立しています。ですから周辺のボディとの境界面には面取りが欠かせません。

こちらはホイール周辺です。ホイールにはナットを取り付ける穴やタイヤに空気を入れるバルブが備わっているほか、タイヤに関してもトレッドパターン(溝)やレタリングが特徴となるのですが、この古い例では手を付けることなく力尽きてしまったようです……。

ここで挙げたものはどれも「ここにコレがありますよ」という記号的な表現でしかなく、これではいかにもCG的です。

③そもそもパーツを省略しすぎている

では省略しなければよいのかと言うと、やはりそれも現実的ではないですよね。
大切なのは、力尽きるまで作り続けるのではなく、何をどこまで作るのか事前に決めておくことです。


自動車は大小様々なパーツの集まりです。大きなパーツは作って当然として「どのレベルまで小さなパーツを作るのか」を考えることが大切になります。

今回は「本物に見えるフォトリアル表現」を目指します。
製造用CADのような数値の精度が問われるわけでもなく、博物館の展示として内部のメカニズムを隅々まで見せることもありません。ならばカメラから見えない部分はまるごと省略しましょう。

今回の新しい作例では一旦車内が見えないようにして、内装は一切作らないことにしました。また、床下の構造や、ホイールの奥深くにあるサスペンションなどもかなり限られたカメラアングルでなければ見えないので省略します。


逆に、小さな割に細部まで作り込むことにしたものもあります。例えばウィンドウのシール材やワイパー、そしてナンバープレートの留め具などです。これらはパーツとしては細かいものですが、どのカメラアングルでもほぼ確実に映りますし、ライトが当たれば相当な情報量を持ったハイライトが生じます。そして何よりこれらは単体で機能を持つものです。自動車は機能美の集合であります。この説得力をみすみす捨てることは出来ないと考えました。

▼資料は飲んでも飲まれるな

ここまでかなりのボリュームで細部についてご紹介しました。ここからは「神は細部に宿るけど『木を見て森を見ず』も危ないよ」というお話です。

モデルを作り込むときに頼りになるのが資料の質と量ですよね。カーモデリングで質も量も間違いない資料は実車なわけですが、いつでも自由に調べられる実車はそうそうありません。(私のように勢い余って購入しない限りは……)

そうなると写真や模型に手がかりを求めることになるかと思います。特にはじめのタイミングでは三面図があれば頼りたくなるかと思います。

あるなら頼ってください!

「<モチーフ名> blueprint」などで検索すると結構見つかります。当てずっぽうで作るよりはよっぽど正確です。でも、気をつけてもらいたいことがあります。

それは最後まで三面図の通りに作ろうとはしないことです。理由が2つあります。

1つ目の理由は、ネットで入手できる三面図は精度がマチマチなことです。
というのも、検索して見つかる三面図はプラモデルに添えられたものなどが多いのですが、図そのものが簡略化されていたり模型のプロポーションに寄ったものがあります。また、スキャン時の光学的な像の歪みがそのままになっていることも考えられます。いくつかの三面図が入手できるときは写真などと見比べて、一番精度が高いもので作業しましょう。


(プラモデルに添えられた三面図の例)

2つ目の理由は、仮に完璧な精度の三面図があったとしても、それだけでは立体を完璧にはトレースできないからです。
自動車のボディに見られる複雑な曲面は設計レベルの情報量でもない限り、三面図程度の平面資料に現れることのほうが稀です。(存在しない情報を三面図から先読みすることも時には重要ですが)パーツの位置関係や大まかなシルエットが出来上がったら、参考資料は三面図から写真カタログなどへと移しましょう。そして、ある段階からは自分の感性を頼りに曲面をコントロールすることになります。

事例をお見せしましょう。

これは三面図にかなり忠実に作業していた初期段階のキャプチャです。このとき、全く同じ車種でありながらMaya上のモデルと普段見ている自分のクルマとで違和感を覚えて手が止まりました。


「もしや」と思いビューポートに実車の画像をセットし、カメラアングルなどを合わせてモデルを透かしたのがこの画像です。ヘッドライト周りのカーブがまったく別物であることに、こうしてわかったのです。薄々気づいていたとはいえやはり衝撃を受けました。


慌てていくつかの写真と見比べたり、より自分の印象に近い形状へと修正し、このようになりました。無論、この車種に詳しくない人には黙っていてもバレないようなことではあります。しかし、実物の印象へと近づけるには資料だけでは不十分で、自分の感性を信じることも大切だということが共感いただけたのではないでしょうか。

最後に、新旧の作例を見比べていただき、本編の結びとさせていただきます。

▼おわりに

カーモデリングは作り込もうと思えばかなりの作業ボリュームとなるだけに、付録を組み立てていく某週刊誌のようにコツコツと長い道のりを歩むこともありえます。

私のような趣味のモデリングならそれでも良いのですが、時間に限りある業務や就職作品制作ならば試行錯誤はなるべく少なく最短ルートでビジュアルを作らなければなりません。今回はそうした方の参考になればと思い、カーモデリングに対する一つアプローチ例をお示ししました。

モデリングが済んだところで、テクスチャリング、マテリアル、ライティング、カメラワークなどのワークフローの紹介もしたいところではありますが、誠に勝手ながら時間の都合もあり今回はここまでとさせていただきます。


この記事がカーモデリングにチャレンジされる方や更に磨きをかけたい方のヒントになりましたら幸いです。

※本記事では特に註釈のない限り次の環境で制作しております:Windows10/Maya2018.5/Arnold5.2

                                            

ヘキサドライブでのゲーム開発に興味をお持ちの方、3DCGアーティストまたはテクニカルアーティストの方、「この記事より自分のほうがモデリング上手いし」という方、ヘキサドライブへのエントリーをお待ちしております。

■ヘキサドライブ 採用サイト
https://hexadrive.jp/recruit/

ということで、「スポーツカーをモデリングしよう!」は以上となります。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

それではまた次回、お会いしましょう!

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